成田良悟「バッカーノ! The Rolling Bootlegs」

マフィア等の裏組織が跳梁跋扈していた禁酒法時代のニューヨークを舞台に、
互いに関わりのなかった泥棒カップルが、マフィアが、カモッラが、
チンピラが、警察が、200年生きる錬金術師が”不老不死の酒”を巡り
偶然が偶然を重ねて巻き込み、巻き込まれていく物語。
登場人物の総てが主役であり、彼等1人1人の別の視点から物語が進行し、
展開していくという構成で、既存の作品でいうと電撃文庫の「ブギーポップ」や、
チュンソフトのゲーム「街」、映画では「パルプフィクション」とか「スナッチ
等々と割と多くの作品で見受けられる手法であります。この手のスタイルが
大好きな自分としてはもう、それを聞いた瞬間に購入候補に上がりましたw


感想
ふー。満足しました。一つの事象が波紋を広げて玉突き事故のように
ガンガンと物語はデッカくなっていき、加速度を増していくので、
読んでいると止まらなくなります。んで、当たり前のようにこのまま行ったら
もう大変な事に!?と想像させておいてそれを土壇場で鮮やかに裏切るミステリ
的な仕掛けも施されているのがナイスです。暗い雰囲気のダーティな作品を
想像していましたが、陽気で魅力的な登場人物達のお陰か明るく気持ちの良い
話で、尚且つ時折ブラックさが飛び出すので話が引き締まっています。
映画的な作品で、映像化するとさぞ面白いだろうなぁと思いました。
気に入ってる場面は、ガンドールファミリーのポーカーシーン、後は、
本をめくって数ページあるカラーページでの話が秀逸すぎる出来栄え。
フィーロの話で引き込まれ、泥棒カップルの話での映画っぽい演出に萌え、
残り二つの話ではその後の巧妙な伏線を担っているわけです。
ぶっちゃけここの数ページこそが最高なのではないでしょうか。
もし、読もうか迷ってる人は最初の数ページだけでも読んでみるといいかも。